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筆・刷毛の原材料と特徴

イタチ毛

イタチ毛

胴体の毛は毛皮として使用されるため、尾の毛のみを使用する。
イタチ毛は産地によって次のように特徴が異なる。

日本産

毛の色は濃い茶色。尾の長さが短い毛には弾力があるが、毛先は中国産より悪い。
現在は捕獲頭数が少なく、筆の材料としてはあまり使用されていない。

韓国産

毛の色、毛先は中国産に近いが、過去に動物保護のため捕獲禁止に指定され、
日本では筆の材料として使用されていない。

中国産

現在、筆の材料としては、99%は中国産の毛を使用している。産地には、
華南、華中、華北があり、その中でも特に、華北の毛が一番良いとされている。
長い尾で、毛も長く、毛先の良いものがコリンスキーと呼ばれている。

狸毛

胴体の毛を使用する。尾の毛は縮みがあり、筆には使用しない。
背筋の毛は黒狸、腹毛は白狸、他の部分は合狸と呼ばれ、筆の種類によって使い分けられる。
狸毛は産地によって次のように特徴が異なる。

日本産

中国産の毛に比べ毛先が良いが、弾力は少し弱い。主に面相筆に使用されている。
しかし、捕獲頭数が少なく、毛の入手は困難である。

中国産

毛先は日本産に比べ悪いが、毛は弾力に富み、面相筆以外の筆に多く使用されている。

豚毛

毛は約17cmあり、根元から靴ブラシ、洋服ブラシ、歯ブラシ等に使用され、残った先の毛を筆に使用する。産地は中国が多く、特に重慶産の毛が上質で多く使用される。日本産、中国の他の地域の豚毛は毛質が悪いため、低価格の筆に使用される。

羊毛

羊毛と呼ばれる毛は中国産の山羊で、日本産の山羊とは全く毛質が異なっている。

日本産は使用して年月が経っても毛に弾力は出ないが、中国産は使用すればするほど、毛に弾力が出てくる。

現在中国より輸入されている羊毛は、一頭より役18種類に選別され、絵筆、刷毛、書道筆等、毛の特徴に分けて使用される。毛質の良い細微毛(毛先が透明に近いアメ色の毛)は、上質の羊毛筆に使用される。毛質の悪い毛は、塗装用刷毛等に使用される。羊尾と呼ばれる尾の毛は、弾力に富んでいるため、筆の芯毛に使用される。

山ウサギ

背筋の毛は紫毛と呼ばれ毛先が良く、弾力に富む。線書、細字書等に適しているが、材料の入手が困難で、高価な原毛である。

リス毛

毛質が柔らかく、主に水彩筆、化粧筆に使用される。

ウォーターバジャー

毛質は硬いが毛先が悪いので、油絵筆や大筆の腰毛に使用している。(アライグマ毛)

鹿毛

鹿には多くの種類があり、日本産や寒い地域の種は、主に染色の引き染め用刷毛に使用される。

また、暖かい地域の種は、筆の腰毛として使用される。例外として、東南アジア地域のサンバと呼ばれる種は、胴毛を筆の腰毛、雄のたてがみを太筆に使用される。

毛の硬さは現在、原毛の中では一番硬い。ただしこの動物は、ワシントン条約にて捕獲禁止になっており、輸入できない。

馬毛

馬毛は、胴体(胴毛)、尾(尾脇毛)、足(足毛)に選別される。胴毛は柔らかく、主に筆の上毛(筆の外側の毛)に使用される。

胴毛の中で、特に硬い毛を選別し、染色用差指、片羽刷毛に使用している。弾力に富んだ尾脇毛(尾毛の胴体から約20cmまでのところにはえている毛)は、太筆等に多く使用される。足毛は毛先が悪いので、主に牛耳毛と混毛して、油絵用筆に使用される。

牛耳毛

​(OX)

牛毛は耳の毛のみ使用され、通常はオックスと呼ばれている。油絵筆の軟毛筆として使用される。また一部は、水彩用筆として使用される。

猫毛

毛質は柔らかいが毛先は太く、絵具を含ませると毛先が丸くなるので玉毛と呼ばれている。(玉毛)

背筋の毛のみ使用される。蒔絵筆に使用される。

ナイロン毛

日本産の人工毛で、東レ、帝人が開発し、当初は化粧筆等に使用する目的で生産されていた。その後、アクリル樹脂絵具が多く使用されるようになり、現在はアクリル絵具用筆の原料として使用されている。材質は、毛の太さにより3種類に分かれ、硬い毛は天然毛と混毛し、腰毛に使用されている。油絵用、トールペイント用等、材質により種々の筆の材料として使用される。

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猫毛
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